旅によって移動するのは人々だけではない、情報も行き来している。
どんな時代でも情報を持つ者は強者である。
今はビッグデータを得る者たち、かつては旅人たちがそれを持っていたのではないか。
100年以上も前の時代に、様々な外の土地の情報をもたらすふらりと集落に立ち寄る旅人たちは重要な“運び屋”だっただろう。
場所から動かない情報と出会う為に人が移動するのが「旅」だった。
宿は移動する人々が留まる場であり、逆に情報が集まる場だった。
しかし、かつては人々が行き来して情報がもたらされたその部分の多くがインターネットに取って代わった。
しかし逆に、土地に留まる「宿」や「宿の人々」は、今でも様々な場所からの生の情報を居ながらにして集める事ができるだろう。そういう意味では、宿、もしくは人々が留まる場所というのは、インターネットの無い時代から”インターネット的存在”だったと言えるだろうし、今でも特別な情報の集め方が出来る場所かもしれない。
2016年に旅するリサーチ・ラボラトリーでリサーチした松浦武四郎は、伊勢参りで賑わう街道沿いで生まれ育った。江戸や様々な土地から人々が往来する土地に生まれたという環境は、彼をまだ見ぬ新しい世界への憧れ、そして情報を持つ大切さを目覚めさせ、冒険家として成長させたのだろう。