移動する速度と情報

最終編集日 : 下道基行

松本人志が昔よくラジオ番組で「プラスマイナスゼロ論」というのを話していた。
例えば、芸能人がすごく有名になるというプラスが起こるとその逆に街を普通に歩けなくなったり恋愛もできなかったりネットで誹謗中傷の対象になったり…と反対のベクトルが起こる……という、しかもそのプラスが大きければ大きいほど逆も大きい、という話だ。
【移動する方法】を考える時、僕はこの松本の話を思い出す。

移動は、隔たりのある「空間」を「時間」を持って接続すること。(いや様々なメディアがこの為にあると言える。)まずは、移動の「時間」を考えてみる。
東海道を東京から名古屋まで新幹線なら1時間半だが、数百年前のように徒歩で行くなら約10日かかっていた。馬だとその何倍も速かった。現代、新幹線だと東京から最南端の「鹿児島中央駅」まで7時間程度、逆に東京から最北端「新函館北斗駅」まで4時間半。船だと、東京から沖縄までは丸2日、小笠原諸島まで丸1日。でも、最近なら格安航空便が日本全国を繋いでいて1−2時間でどこへでも格安で行ける。(小笠原には飛行場がないので船でしかいけないが……)
しかし、ここで先ほどの「プラスマイナスゼロ論」を【移動する方法】に当てはめてみると……。例えば、最もシンプルな移動法「徒歩」だと「速度」はとても遅いのでマイナスかもしれないが、風景や人々と出会い得られる「情報」量は新幹線や飛行機と比べられないほど多い。ゆっくり移動すると風景や路上での些細な発見や人々の営みや結構色々な発見があるだろう。遅い代わりに多くの情報を得ている。さらに、新幹線は車窓から発見があっても自動車ほどすぐに止まれなくて諦めてしまうことも多々ある。
仕事の為だけに目的地に一直線に行くためなら、より早いスピードで移動するのが当たり前なのかもしれないが、せっかく知らない場所を旅するのならすこしスピードをゆっくり目に移動してみてはどうだろう。スマホやパソコンのモニターからではなく、肉眼や車窓から飛び込んでくる生の情報や出会いをより多く受け止め、思いもよらぬ発見に自らの脳みそや身体をさらしてみるのも良いのでは。

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