移動と宿

最終編集日 : 下道基行

『やりたくないのに、いつも絶対にやってしまうことは?』
そんな質問を受けたことがある。
その時『寝ること』と答えた。

旅する中で、「移動」を線とするなら「宿」は点。その点と線とを繋ぎながら旅のスケジュールを考えて行く。そして、1日1日宿泊先がなければ旅は成立しない。もし「移動」でお金が無ければ歩けばいい、ただ、雨の日や寒い日、知らない街でも人は寝なくてはいけない。松尾芭蕉の時代でも、どんな時代でもそれは同じだろう。旅の中で宿が決まらないまま日も傾き雨に降られると、心寂しい気持ちになる。

ふらふらと一人旅なら、ある程度の行き先だけを決めて、旅の中で予定を変更しながら旅をすることは簡単だ。観光案内所も閉まってしまった夜、辿り着いた知らない街でスマホでホテルや寝れる場所を探すことも不可能ではないし、車中泊や小さなテントを持っていればさらに宿の予約すら必要ない。しかし、何人かのメンバーで旅をする場合はなかなかそうはいかない。目的地だけを繋いで行く旅なら、ある程度の時間の余裕を考えながら、飛行機や電車の時刻表を見ながら繋いで行けば、自ずと滞在する街や宿のスケジュールは決まってくるだろう。しかし、時間の余裕があって、何が起こるか分からない偶然性も引き込むような旅をする場合、行きと帰りの交通手段だけを押さえて、宿泊先で次の予定を立てながらパソコンやスマホで宿や交通手段を予約しながら、少しづつ旅を作りながら進むのも緊張感があって楽しいものだ。

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Recommended Notes

2018.03.09 下道基行
松本人志が昔よくラジオ番組で「プラスマイナスゼロ論」というのを話していた。例えば、芸能人がすごく有名になるというプラスが起こるとその逆に街を普通に歩けなくなったり恋愛もできなかったりネットで誹謗中傷の対象になったり…と反対のベクトルが起こる……という、しかもそのプラスが大きければ大きいほど逆も大きい、という話だ。【移動する方法】を考える…
2018.03.09 下道基行
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