リサーチプロジェクトを進めていくにあたり様々なコミュニケーションが必要となる。もちろんベースになるのは通常の対面のミーティング。ただ旅するリサーチ・ラボラトリー(TRラボ)の場合、ディレクターの2人がほぼ通年で国内外を移動していたり、メンバーもそれぞれに違う場所をベースにそれぞれの仕事やプロジェクトを抱えていて、めったに全員が同じ土地に居合わせることはない。そこで最も頻繁に行われるのはオンラインミーティングとなる。
TRラボで言うと最終成果物はテキストが多く含まれるのだがそれらの編集作業においても力を発揮するのがオンラインツール。メンバーの誰かが海外にいることも多いため時差は合わせることが難しい場合は誰かが編集したものを後からまた誰かが編集するそういったこともシームレスに行うことができる。たまたまアクセスした際にメンバーの誰かが既にログインしている時などもあり、不意にそこでチャットが始まり何かしらアイディアが生まれることもある。
プロジェクトを運営していく上で実際に必要なのは頻繁にとりかわされる「あのウェブサイトなんだっけ?」、「あのテキストもう一度送ってください」とか「現在予算状況はどうなっていますか?」といったやりとり。そしてその返信を待つ時間も馬鹿にならない。これらを省くために、現在はGoogleのクラウドサービスを利用し、1つのGoogleシートにタブをどんどん加えていくことで項目を自由に増やせるようにし、テキスト関連のファイルも一旦Google上でドキュメント化し、リンクを貼ってリストにしておくことでファイルが見れるだけではなく必要があればメンバーの誰もが編集を随時加えることができるようにしてある。例えばオンラインミーティング中にはリサーチ内容に関するウェブサイトのURL等が即興的にやり取りされるのだが、これらを後からチャット履歴をたどりながら探すことはかなり面倒なため、重要と思われるものに関してはすぐにリンクをそのまま共有のマスターシートのリンク集と言うタブ先にコピペする。こうすることでリサーチのきっかけの履歴もストックしておくことが出来る。(ついでに謎のリンクも整理されずに残ったりする……例えば2017-2018年のリンク集には「さだまさしのコンサートスケジュール」へのリンクがある。)クラウドサービスはオンラインミーティングとの相性が非常に良く、ミーティングをしながら1つのドキュメントを全員で作成するといったことは割と日常茶飯事だ。
書いてみると、あたかもクラウドサービスの宣伝のように聞こえるかもしれないが、3年間で培った1つの技術というか成果はここにあるように感じているし。オンライン上ではあるが、同じリンクをクリックしてミーティングルームに集まったり、書類を眺めたりしているうちに、だんだんとそこにラボが存在しているように感じられてくる感覚は本当に面白い。ただ、こういった最新のツールはグループ内に詳しくて積極的な人や苦手意識があってあまり得意ではない人まで様々なので、言うまでもなく重要なのはチームの形に合ったものを選ぶこと。これらのツール自体がチームのあり方を決定するとは言わないが、多分に影響を与えるものだと思う。