ここで言う「チーム」というのはまず、リサーチが短期にせよ長期にせよ、ある一定期間集中してグループで一緒にリサーチするタイプのプロジェクトを前提としている。2名以上の誰かがコレクティブに集まる時にそれぞれのポジションが自ずと決まるようなことはあるだろう。例えば予算などの都合上でグループの人数が限られている場合キャラかぶり=ポジションの重複などは避けるほうが良いかもしれない。メンバーを選ぶ時には舞台や映画のキャスティングだったり、野球やサッカーのフォーメーションを組み立てるようなイメージをもつと良いかもしれない。監督やリーダーもひとつのポジションであり、適材者がその役割を担えば良いと思う。普段はチームの外に居て相談にのってくれるスーパーバイザーのような人も重要なポジションだ。
メンバーが決まったら、リサーチトリップに出る前にチームビルディングを進める必要がある。チームメイト同士の呼吸を事前にあわせたり、お互いのポジションを認めあって納得し、チーム内での役割などがわかるまでに少し時間が必要なのは当然だ。例えば一緒に資料館に行ったりするだけでもいいし、トリップに先んじてインタビューをいくつか単発でしたり、リサーチマテリアルの読書会のようなことをしたり、シチュエーションはいくらでもあるだろう。
旅するリサーチ・ラボラトリー(TRラボ)には2人のディレクターがいる。私はその一人だが、チーム内ではリーダーの役割。ざっくりサッカーで例えるなら私はトップ下だ。相方はプロジェクトのディレクションに関するアイデアをどんどん発信していくワントップ。もちろん現場の状況次第でポジションは入れ替わることもあるが、基本的にそういう認識を持つほうが何かとうまくいく。1つの攻撃パターンを見出すとバリエーションも生まれるし、メンバーの動きもよくなる。ここでやっかいなのは変な平等意識。誰々が一番仕事をしている、とか誰々はさぼってるんじゃないか?とか。事実そういうこともあるだろうが、チームとして機能するかどうかが肝心なので、汗かき走り回る選手と、たまに動いて点を取る選手がいるのと同じかもしれない。でもたまに動く選手もずっと気を張っていたりすることだってあるだろう。TRラボのディレクターズの場合もお互いのポジションをはっきりさせるのにはちょっと時間がかかったし、今では減ったけど、時折「改めて言うけど……」とポジションを確認する必要もある。
1年目のリサーチアソシエイトは面接で選ばせてもらったのだが、初めてのことというのもあり選考は難しかった。悩んだあげく、予定の人数を一人増やしてスーパーバイザーが推した人を一人採用した。結果、その人はチームに絶妙の空間を作り、リサーチトリップ中に本当に助かった。
TRラボではいろいろと同時化*(詳しくは成果物を御覧ください。)して来たが、チームビルディングがうまくいっているとこのスピードや精度があがる。簡単に言うと信頼関係がすでにある程度あるからだろう。逆にここを怠ると……。